波動関数(wave function)


確率解釈

 複素数の波である量子力学における波動関数が、物理的に何を表しているのかは良く分かっていません。これは量子力学が作られた時からの難問で、現在では確率解釈を採る事で丸く収まっています。しかしこの考え方に賛同できなかった科学者も少なくなかったようです。

 確率解釈とは「波動関数の絶対値の2乗 eq_qm017.png(360 byte) が粒子の存在する確率密度関数になっている」と解釈します。この解釈に因れば粒子の位置は確定せず、その確率分布だけが得られると言う事です。これは測定装置や測定技術の不備などではなく原理的にこの様な結果しか得られないと言う事です。

波動関数が表すもの

 ニュートン力学ではポテンシャルが与えられれば粒子の状態が時間の関数として決定できました。量子力学ではその状態は波動関数に込められています。演算子を作用させる事で位置や運動量、エネルギーなどを得る事が出来ます。

 また、この波動関数は時と場合によって固有値方程式固有関数状態ベクトルなどと呼ばれる事があります。

波動関数の規格化

 波動関数の絶対値の2乗 eq_qm017.png(360 byte) は粒子の存在確率を与えるので、全空間で積分

eq_qm019.png(500 byte)

すればその値は1になっていなければおかしい事が分かるでしょうか?全空間のどこかには存在すると言う事ですね。ところが求めた波動関数がこのようになっているとは限りません。この時波動関数の係数を調節して全空間での存在確率を1にする事を規格化(normalization)すると言います。

固有状態

 ある波動関数 phi.png(270 byte) が固有値方程式 eigen_veq.png(339 byte) をみたす時、この波動関数を固有値 ramda.png(268 byte) に属する固有関数と言い、この波動関数は固有状態にあると言います。逆に言えば、固有状態にあれば演算子 を波動関数に作用させる事で固有値 ramda.png(268 byte) を得る事が出来るのです。(→固有値方程式)この時に固有値が得られなかったらその波動関数は固有状態ではないことになります。

 この固有状態にある時には測定される物理量は固有値 ramda.png(268 byte) に確定します。また、固有値があると言う事は固有状態であるとも言えそうですね。

重ね合わせの原理

 いくつかの固有状態があるときその重ね合わせも可能な状態となります。このときの波動関数は

eq_qm020.png(369 byte)

の様に、固有関数の和の形に書けます。このような状態は固有状態ではない(固有値方程式が立てられない)ので実際に観測される物理量はある確率でいずれかの固有値が観測されます。ci が観測される確率 P(ci ) は

eq_qm021.png(519 byte)

で与えられます。

関連項目

←確率密度関数(数理統計学)
←固有値(線形代数学)
→物理量と演算子