最速降下線問題(Brachistochrone)


問題

dy_fig001.png(90054 byte) 17世紀のベルヌーイ(Jean Bernoulli (1667-1748) ベルヌーイの名のつく人は沢山居る)によって提起されニュートン等にあっさり解かれて落胆したと言う問題ですが、ノーヒントで解ける人は殆ど居ないでしょう。ちなみに上の英文字はブラッキストクローンと読みます。

 重力場の中で質点を曲線に沿って落下させます。鉛直面 Oxy 内の原点 O から点 A に向かって落下する時、落下時間が極小になるように曲線の形を決定せよ。

変分法を使って解く

落下時間を求める

 まず、点 P における速さは力学的エネルギー保存則 eq_dy002.png(421 byte) より

eq_dy003.png(363 byte) (1)

です。また、点 P での曲線の長さは

eq_dy004.png(440 byte) (2)

と表されます。(1)式と(2)式より、点 O から点 A まで滑り落ちる時間 T は

eq_dy005.png(1869 byte) (3)

となります。

曲線の満たす方程式を求める

 これから曲線の形を求めるには落下時間が最小となる関数 y(x).png(970 byte) を求めます。変分法の考え方より T が極値になるには、変分

eq_dy006.png(723 byte) (4)

が任意の eq_dy009.png(289 byte) について成り立てば良いのです。ここで eq_dy007.png(425 byte) とします。第1項目をテイラー展開して高次の微小量を無視すると

eq_dy008.png(1448 byte) (5)

となります。ここで第2項目は部分積分をすれば

eq_dy010.png(1687 byte) (6)

となるので

eq_dy011.png(750 byte) (7)

となり、これが任意の eq_dy009.png(289 byte) について成り立つので

eq_dy012.png(521 byte) (8)

の様な偏微分方程式の形で曲線の充たすべき条件を導けました。この方程式を解く為に(3)式を代入します。

eq_dy013.png(1568 byte) (9)

ここで eq_dy014.png(400 byte) を計算するのに対数微分法を使ってみます。両辺の自然対数を取ります。

eq_dy015.png(715 byte) (10)

両辺を x.png(258 byte) で微分すると

eq_dy016.png(2864 byte) (11)

となるので、(8)式は

eq_dy017.png(2310 byte) (12)

となります。結局、微分方程式

eq_dy018.png(394 byte) (13)

が得られました。

微分方程式を解く

 と言っても(自分には)解けません。非線形の微分方程式ですからね。とりあえずエネルギー積分の時と同様に両辺に y ' をかけると

eq_dy019.png(679 byte) (14)

となるので積分すれば(問)(14)式で、下の式の微分を実行すると上の式になる事を確かめよ。

eq_dy020.png(437 byte) (15)

が得られます。この微分方程式はサイクロイド曲線を解に持つそうです。

eq_dy021.png(530 byte)

が(15)式の解になっている事は代入すれば確かめられます。(問)では確かめてみよう!こうして最速降下曲線はサイクロイド曲線である事が分かりました。

関連項目

サイクロイド曲線|